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企業一覧(JISA会員企業)


情報サービス産業の仕事と働き方

情報システム構築・運用の仕事

情報システム構築の目的

企業における情報システム構築の目的は、以前は業務の省力化が中心でした。例えば、会社で発生する膨大な伝票の処理には、昔は人手を介して膨大な時間を費やしていました。しかし、情報通信ネットワークとコンピュータを使えば瞬時に処理をすることができます。これにより伝票処理をする社員の作業負荷が軽減し、より知的な仕事に従事できました。今日、企業が情報システムに求めることは「省力化」から「情報の戦略的利用」に移ってきています。 情報システムは、競合他社との差別化、あるいはこれまでにない新たなビジネスの創出を目的に構築されます。 例えば、駅で券売機が登場すると切符を販売していた駅員は別の仕事に関わるようになりました。これは省力化です。 現在では切符の代わりにICカードを使い、電子マネーを蓄え、食品や日用品まで購入できる「サービス」が提供されています。これは新しいビジネスの創出と言えるでしょう。

プロセス

情報システムの構築は、その工程から「分析」「設計」「プログラミング」「テスト」「運用・保守」のプロセスに分類されます。 分析は、さらに「システム企画」と「要求定義」に分けられ、主にコンサルタントや高度ITスペシャリスト、プロジェクトマネジャーなどが担当します。 設計は、「基本設計(システム設計)」と「詳細設計(モジュール設計)」に分けられ、主にITスペシャリストが担当します。 プログラミングは、主に比較的経験の浅いITスペシャリストが詳細設計書に従いプログラム作成を行います。 テスト工程は、さらにモジュール単体のプログラムテスト、複数のモジュールを結合したサブシステムレベルの結合テスト、 サブシステムを結合した全体システムとしてのシステムテストに分けられ、それぞれ動作や機能の確認が行われます。運用・保守は、実際にシステムが稼働した後に運用評価や変更要求や想定していなかった不具合への対応を行います。

ソフトウェア開発は、目に見えないものを複数の技術者がプロジェクトチームで作りあげていきます。 作業の進捗管理や製品の品質管理が難しく、個人の経験・ノウハウに依存する傾向が強という特性があります。 ソフトウェア開発プロジェクトの成否はそこに参加する人材のスキルが鍵となります。[図表1]

[図表1] 情報システム構築・運用の仕事

開発手順

情報システムを開発するにあたり、情報サービス事業者は開発標準を利用しますが、 最も標準的なプロセスには(独)情報処理推進機構ソフトウェア高信頼化センター(SEC)の 「共通フレーム」があります。[図表2]

[図表2] 共通フレーム2013の基本構成

出典:「SEC BOOKS 共通フレーム2013」
独立行政法人情報処理推進機構(IPA) 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター(SEC)

図表2には各プロセスが記載されていますが、開発に関係が深いのは、企画プロセス、要件定義プロセス、開発プロセス、運用プロセス、保守プロセスです。 企画プロセス及び要件定義プロセスは、どのような情報システムを構築するか、 目指すシステムの方針や実施計画、推進体制、ニーズの把握や整理、関係者間の利害調整、性能評価など、開発の事前準備をこのプロセスで実施します。 このプロセスの出来如何で、開発プロジェクトの成否が決まると言っても過言ではありません。

開発プロセスは、要件定義プロセスで取り決めたビジネス要件(顧客が情報システムで実現したい要望)を技術要件に変換します。 情報システムは現実業務のモデル化ですから、 開発者としてはできるだけ論理的に作りたいと考えます。しかし現実の業務は、モデル通りにはいかないものです。 通常の手順を変更することもあるし、現場判断をシステムに即座に反映させたい場合もあります。 このようなモデル化になじまない要件を、技術要件にどのように盛り込むのか、非常に難しい判断を迫られます。

技術要件が整理されれば、ハードウェアやネットワーク、ソフトウェアの詳細な設計に入ります。ハードウェアやネットワークは、技術要件通りに動作できる性能を持っていなければいけません。ソフトウェア設計ではプログラムロジック、データベース、インタフェースなどを設計します。またソフトウェア完成後の評価手順としてテスト仕様も決定します。 このプロセスでは作るだけでなく評価する手順も決めます。このような設計作業を経てプログラミング作業が始まり、コンピュータ上で動作が確認できるようになります。

開発プロセスの終了は、顧客に納品する情報システムの完成を意味します。 開発者としてはひと安心、といいたいところですが、情報システムの観点から見ると、ここはひとつの通過点にすぎません。保守プロセスでは、完成した情報システムを維持管理します。さらに、企業は社会の要請に伴うビジネス変化を情報システムに反映させるため、機能追加や改変を行います。運用プロセスでは、情報システムの正常稼働監視や効率評価、運用担当者の教育等を行います。

ドキュメントの整備

開発標準ではプロセスを定義するだけでなく、プロセスごとに何を成果として残すかも併せて定義しています。 この成果は多くの場合、ドキュメントあるいは仕様書という文書です。 この文書が情報システムの設計書そのもので、開発チームにとってはなくてはならないものです。もちろん開発を終えてからも設計書は保守、運用のために重要です。

情報システムの信頼性

情報システムの信頼性はメトリクス(管理指標)により定量的に管理されます。 メトリクスには、システム構築過程を評価する項目と出来上がったシステム機能を評価するものがあります。情報システムでは製品性能だけでなく、作られた環境も考慮して信頼性を管理しています。 また、システム要件のうち非機能要件と呼ばれるレスポンスやセキュリティといった事項についても、要求レベルを設定した上で、レベルにあった情報システムを構築しています。

情報システムのサービスレベル

SaaS(Software as a Service)などのITサービスでは、SLA(Service Level Agreement)と呼ばれるサービスの利用条件を決定します。 SLAでは提供する情報システムの「サービス稼働率」「平均復旧時間」「提供時間帯」「バックアップデータの保存期間」 「バックアップデータの保存期間」「データ消去の要件」「通信の暗号化レベル」など、ITサービスの提供者と顧客との間で必要なサービスレベルを確定していきます。 ITサービス提供者はSLAで定められた条件で稼働する情報システムを構築しなければなりません。

継続的な維持・改善

情報システムを活用する顧客にとっては、情報システムを開発することが目的ではありません。 情報システムが提供する機能やサービスにより、自らの経営や本来の仕事をより高度なものにすることが目的です。 そのためには、情報システムは一度作ってしまえば終わりではなく、社会インフラと言われる電気・ガス・水道・道路のように、継続的に維持・改善しなければなりません。

プロジェクトマネジメント

プロジェクト管理をプロジェクトマネジメントと言います。 プロジェクトマネジメントには、システム化計画にもとづくプロジェクト実行計画の策定、必要な人員や資源の調達、予算管理、納期管理、要員管理、品質管理等、 プロジェクトが円滑に遂行されるための様々な機能があります。 プロジェクトには、決められた期日までに要求された機能を満たした情報システムを、高い品質で、予算内に提供できるかが重要なミッションとなります。


情報サービス産業の働き方

仕事のやり甲斐

優秀なIT人材の採用と育成はグローバルな課題となっています。 しかし、近年の日本では、学生など若者にITの仕事の魅力や社会的重要性が見過ごされる傾向があります。 大学の就職部の認識でも情報サービス産業は、「社会や経済に担う基幹産業」「活力があり成長が期待できる産業」「社会的認知度の高い産業」 としながらも「人を大切にする産業」に対しては否定的なイメージが先行しているのも事実です。

これらは情報サービス産業が自ら仕事のやり甲斐や魅力を説明できていなかったことと反省すべきことと考えています。 実際は、情報サービス産業の各企業では、優秀な人材を育て、働きやすい環境を整え、個人のやる気を高め、 仕事の成果を適正に評価する人材マネジメントの実践を経営の重要テーマとして実行しています。 人を大切にすることとは、社員ひとり一人が社会から認められ、相応の評価を受け、個々人の自己実現をかなえる環境を築くことと考えています。[図表3]

[図表3] 情報サービス産業に対する就職指導者の認識

※資料:JISA「情報サービス産業の人材戦略に関する提案」より作成

あるべき働き方を指向

情報サービス産業では、働く環境の向上を図るために"あるべき働き方"を示し、労働時間の適正化を図り、ワークライフ・バランスを実現し、 従業員満足度倍増および女性管理職・プロジェクトマネージャの増加などを目標として掲げています。 また、働くひとり一人が自身の仕事に誇りを持ち、経営の主体性を保持し、魅力ある産業を実現し、様々な社会的要請に対応し、自らが企業や産業とともに成長できる環境づくりを目指しています。

一方、システム開発の現場では、短納期化、多発する仕様変更、新たな技術や開発手法の習得、個人情報や機密情報の管理強化など、業務の過密度がますます高まり、 労働時間が長くなる傾向にあります。働く環境の向上を図るには、仕事の進め方(プロジェクトマネジメント)を改善し、生産性を高めていく必要があります。

マネジメント・レベルは、仕事の進め方が個々の担当者により属人的に行われている第1段階から、プロジェクトマネジャーによる仕事管理が確立している第2段階、 組織として管理が標準化されている第3段階、さらに仕事が定量的に把握・管理されている第4段階、組織として仕事が自立的に改善されている第5段階の5つのレベルに整理できます。 企業は、自社のプロジェクトマネジメントを、プロジェクト管理、工程管理、ソフトウェアエンジニアリング、マネジメントの支援の側面からチェックし、マネジメント・レベルを上げ、 生産性を高め、労働時間短縮に取り組んでいます。[図表4]

[図表4] CMMI(Capability Maturity Model Integration)等を参考に作成したマネジメントレベル・モデル

※資料:JISA、全国労働基準関係団体連合会「魅力ある情報サービス産業をめざして」より